Steinbeck, "East of Eden" (エデンの東) 12 自由な思考

時に栄光が人の思考を輝き照らすことがある。そのようなとき、肌は空気を味わい、呼吸は甘美に変わる。脳の中で煌めきが生じ、世界は炎のように燃えあがる。それは、思考の輝きであり、創造である。人の価値は、この栄光、思考の輝きの質や量によると、著者は語る。

外界は時にモンスターのように牙をむき人に襲いかかる。そのような外界へ対抗するために、人は協力する。一人よりも二人の方が石を運ぶことは容易である。たくさんの人でやる方が大きな事を為し遂げられる。そうして、我々は大量生産の時代に入る。大量生産は効率が良く、それ故に人の物質的な生活に浸食していく。物質的な生活に留まらず、大量生産の集団的な概念は、思想や宗教などの精神的な世界にさえも浸食していくのだ。

そのような時代であるからこそ、著者は問いを投げかける。「何を信ずるべきか」「何のために、何に対して闘うのか」と。

何を信ずるのか:
個人が持つ自由で探求する思考こそ最も価値あるものである。

何のために闘うのか:
思想の自由のために。

何に対して闘うのか:
思想の自由を阻み破壊する全てのもの、それが思想、宗教、政府であろうとも。
"East of Eden", Penguin Books, John Steinbeck
 

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