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フィネガンズ・ウェイク 10 蘇ること

H.C.イアウィッカに何かが働いている。HCEの物語上での重要性がほのめかされている部分がたくさんある。 なにゆえに汝は大地より弥有為(いやうい)っくに目覚めさせんと欲するのか、おお、どこぞの召還人よ、彼は歳重ねた塵に風化されおるではないか?(2巻 p74) イアウィッカと同じようにアナという名前が随所に挟まれている。重要な役割を担っているようだ。 というのもアナは始めにそうだったようにいまも生きており、大いなる深海の睡眠から再醒しつつ戻ってくるであろうし、白夜は高くこん然たる夢家みやたらなることはウェストウィックローに雲覆う雨期のあるごとくに驟雨確かであり、あるいは小さな薔薇が棘樹に生える怠け者であるごとくだ。(2巻p129) 「フィネガンズ・ウェイク」 河出文庫 ジェイムズ・ジョイス著 柳瀬尚紀訳

フィネガンズ・ウェイク 9 えいちしいいい

たくさんの「えいちしいいい」がでてくる。 栄地四囲委蛇 1巻p19 栄恥しい違々 p21 嬰稚示威違々 p22 永地四位い移 p25 営地ニテ椎ヅカニ遺ータイトナレリ p26 えい地四囲夷為 p32 嬰乳枝為怡々 p33 これ以外にもたくさん出てくる。なんだろうと思っていると次の文章が飛び込んでくる。 大 いなる事実が露出する。すなわり、その歴史的時点後、これまで発掘されたハロンフリーの頭文字による自筆文書のすべてにHCEの署名があり、そして彼は、 ルカリゾッドの飢えがりーな痩せこけ宿無したちにはたんに長くつねづね人好しアンフリー公、同輩たちにはチンバーズで通っていたが、同等に確かに、民達の 快い気質がそれらの名称文字の意味として与えた仇名は、営地司位威々ことヒア・カムズ・エヴリボディこと万仁来太郎であった。(1巻p71) 「えいちしいいい」は、「HCE」のことで、H.C.イアウィッカーのようである。 偉大潔癖巨人、H・C・Eアウィッカーの崇高かつ長久かつ総徳の総存在に浸透する耶蘇性を知り、それを愛する者なら誰しもが、(1巻p74) HCEからヒア・カムズ・エヴリボディの渾名を持っていたようである。手が込んでいる。更に形を変えて「えいちしいいい」が出てくる。 そして千鳥歩きに、再浸り名が、こブモチー・こロンダーゾ・へッグバート・くラムウェル・るカリゾッド・だンマリー・れキセンレンマー・でーンユーシャ・もノグサー・かエサルノテキ・れッキトオーディン・でマノボークン・もトノモクアミー・あーサー・まタネール・ねゴトゥール・くンリンイグドラシル氏であるのか?(1巻p173) なんと出てくる長い名前の頭文字を取っていくと、「ここへくるだれでもかれでもあまねく」となるのだが、まさしくこれは「ヒア・カムズ・エヴリボディ」である。 「フィネガンズ・ウェイク」 河出文庫 ジェイムズ・ジョイス著 柳瀬尚紀訳