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Steinbeck, "East of Eden" (エデンの東) 21 ハミルトン一家

エデンの東の中で描かれているサミュエル・ハミルトン一家の人々 サミュエル Samuel: アイルランド移民1世。アイルランド人らしい機知に富んだ陽気な話をする人で、誰にでも好かれるタイプであった。 また、知的好奇心に溢れた、本の虫でもあった。高等教育は受けていないようではあるが、周囲の労働者階級の人々に嫌悪感を与えないように密かにではあった が知的な人間として生きていた。農場の経営の傍ら、器用さで持って鍛冶仕事をして周辺の者の役に立っていた。鍛冶の延長で、持ち前の才能を使って多くの発 明をしたが、商売には結びつかず貧乏のままであった。しかし、彼には経済的な成功は一番大切なことではなかった。 リザ Liza: サミュエルの妻。現実的な人で、 夢を追いかけているサミュエルとは対照的な人物だった。毎日の労働は、それを誰かがやらなければならないから、自分で引き受けていた。毎日の聖書と祈りも やるべき事であるから欠かさず実行していた。 ジョージ George: 背の高いハンサムな少年であった。紳士的。罪とは無縁の存在。実は悪性貧血であることが後に判明した。彼の罪無き存在はエネルギーの欠如の中にあった。 ウィル Will: サミュエルが発明好きで進歩的な考えを持っていたのと対照的に、保守的、現実的であった。運にも恵まれたこともあるが、財産を作ることもできた。物語の中で、カレブとパートナーを組み、豆の先物買いで成功する。 トム Tom: サミュエルに最も似ている息子。いつも頭の中を新しい発想や発明が疾走していて、夢の中で暮らしているような存在。物語の中で、サミュエルと共にアダムの土地に井戸を掘る。 ジョー Joe(Joseph): 家の仕事は何をやっても上手くできず、家族にいつも手伝ってもらっていた。リザはそういう頼りないジョーを可愛がっていた。大学へ行って勉強する。 ウナ Una: サミュエルの自慢の娘。父親と同様に本が好きであった。 リジー Lizzie:  デシー Dessie: 服飾を学び、服飾の店を開店。女性達が集まる人気の店となった。 オリーブ Olive: 学校の先生に。ジョン・スタインベックの母。物語の中で少年ジョン・スタインベックが、オリーブの許を訪ねてきたトムと会話する場面も描かれている。 モリー Mollie; 美

Steinbeck, "East of Eden"(エデンの東) 20 カレブへの祝福

アダムの許に戦場からアロンの訃報が届いた。それがきっかけとなりアダムは脳出血で倒れ寝たきりに近い状態になってしまう。アロンの命、アダムの健康、それらを損わせた原因が自分にあると考えているカレブには堪えられなかった。カレブは自分を責め続けた。 "I did it," Cal cried. "I'm responsible for Aron's death and for your sickness. I took him to Kate's. I showed hime his mother. That's why he went away. I don't want to do bad things -- but I do them." (p593) カレブは、何も言わないアダムの目が、アロンの死のことで自分を責めていると感じた。カレブは父に見放されては行く場所はなかった。生きていけなかった。リーは否定する。 リーは、カレブと共に、アダムのベッドに行くと語り始めた。カレブはアダムから拒絶されたと感じてアロンへの仕打ちを為した。それは彼が為した罪ではあるが、彼一人で堪えられるような罪ではない。拒絶によって彼を破滅させないで。アダム、どうか彼に祝福を与えて欲しい。祝福で彼を支えて欲しい。 ほとんど動けないアダムにとって至難の業であったが、アダムの右手が静かに持ち上がり、そして下に降ろされた。祝福の仕草である。リーがアダムの口元に耳を近づけるとアダムの口がかすかな言葉を出した。 "Timshel!" 道は開かれている。祝福が為されて、カレブは罪から解放されるのだった。 なんと力強く美しい物語であったことか。自分の背負う罪の重さ、真の自分に向き合うことの難しさ、罪を乗り越えて生きていくことが出来ることの素晴らしさ。生きると言うことは何なのかということを振りかえらさせてくれた物語であった。深く重い主題ではあるが、著者の暖かな視線と前向きな思想が物語を包み込み、読む者に勇気を与えてくれているように感じる。 "East of Eden", Penguin Books, John Steinbeck