スタンダール 「赤と黒」 3 司教

国王陛下が行幸され、ヴェリエールを通ってブレールーオに安置された有名な聖クレマンの遺骨に参拝することになった。祭典が催され、アグドの司教とともに元司祭のシェラン師も参列する。ジュリアンは、シェラン師の副助祭として同席することができた。こうしてジュリアンは若い司教と接する機会を得る。

「ジュリアンはこんな壮麗な儀式を目のあたりに見て感激のあまりただぼんやりしていた。司教の年の若さを見て目覚めた野心、そのひとの感じの細やかさ、気持ちのいい上品さ、そういうものが彼の心をすっかりかき乱していた。」(第18章)

「彼はもうナポレオンや武勲のことなど思ってもいなかった。(あんなに若くって、アグドの司教なんだ!だがアグドっていったいどこだろう?そしてあれでいくらの収入があるんだろう?おそらく二三十万フランかな)」(第18章)

もう軍人として出世できる時代ではないと気がつき、僧侶を志していたわけであるが、若い司教と接してその気持ちをもっとはっきりと認識したのである。そして、あんなに崇拝しているナポレオンのことさえ忘れてしまった。








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