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フィネガンズ・ウェイク 12 一一三二

1132という数字が繰り返し出てくる。どういう意味であろうか。 洪歴1132SOS(2巻P370) PPO1132年頃じゃった、上陸を指揮していたのは蛾張りの将軍ボナパルドイチェ(2巻p372) ブライアン通りだったかブライド通りだったかの一一三二、一世紀遅れの歩哨が入り口近くにおった。(2巻p372) 「フィネガンズ・ウェイク」 河出文庫 ジェイムズ・ジョイス著 柳瀬尚紀訳

フィネガンズ・ウェイク 11 地名

柳瀬訳にはたくさんの駄洒落や日本語の遊びが入っている。地名もたくさん出てくる。東急のこともでていたりする。 いったいなに尾しでかしたんだい、川内(せんだい)の聖獣鎮魂日にさあ?(p365 1巻) そのサビニの可愛(えの)こちゃんを(p367 1巻) 鹿児島県薩摩川内市の地名まで出てきている、訳者の知識には驚かされる。 「フィネガンズ・ウェイク」 河出文庫 ジェイムズ・ジョイス著 柳瀬尚紀訳

フィネガンズ・ウェイク 10 蘇ること

H.C.イアウィッカに何かが働いている。HCEの物語上での重要性がほのめかされている部分がたくさんある。 なにゆえに汝は大地より弥有為(いやうい)っくに目覚めさせんと欲するのか、おお、どこぞの召還人よ、彼は歳重ねた塵に風化されおるではないか?(2巻 p74) イアウィッカと同じようにアナという名前が随所に挟まれている。重要な役割を担っているようだ。 というのもアナは始めにそうだったようにいまも生きており、大いなる深海の睡眠から再醒しつつ戻ってくるであろうし、白夜は高くこん然たる夢家みやたらなることはウェストウィックローに雲覆う雨期のあるごとくに驟雨確かであり、あるいは小さな薔薇が棘樹に生える怠け者であるごとくだ。(2巻p129) 「フィネガンズ・ウェイク」 河出文庫 ジェイムズ・ジョイス著 柳瀬尚紀訳

フィネガンズ・ウェイク 9 えいちしいいい

たくさんの「えいちしいいい」がでてくる。 栄地四囲委蛇 1巻p19 栄恥しい違々 p21 嬰稚示威違々 p22 永地四位い移 p25 営地ニテ椎ヅカニ遺ータイトナレリ p26 えい地四囲夷為 p32 嬰乳枝為怡々 p33 これ以外にもたくさん出てくる。なんだろうと思っていると次の文章が飛び込んでくる。 大 いなる事実が露出する。すなわり、その歴史的時点後、これまで発掘されたハロンフリーの頭文字による自筆文書のすべてにHCEの署名があり、そして彼は、 ルカリゾッドの飢えがりーな痩せこけ宿無したちにはたんに長くつねづね人好しアンフリー公、同輩たちにはチンバーズで通っていたが、同等に確かに、民達の 快い気質がそれらの名称文字の意味として与えた仇名は、営地司位威々ことヒア・カムズ・エヴリボディこと万仁来太郎であった。(1巻p71) 「えいちしいいい」は、「HCE」のことで、H.C.イアウィッカーのようである。 偉大潔癖巨人、H・C・Eアウィッカーの崇高かつ長久かつ総徳の総存在に浸透する耶蘇性を知り、それを愛する者なら誰しもが、(1巻p74) HCEからヒア・カムズ・エヴリボディの渾名を持っていたようである。手が込んでいる。更に形を変えて「えいちしいいい」が出てくる。 そして千鳥歩きに、再浸り名が、こブモチー・こロンダーゾ・へッグバート・くラムウェル・るカリゾッド・だンマリー・れキセンレンマー・でーンユーシャ・もノグサー・かエサルノテキ・れッキトオーディン・でマノボークン・もトノモクアミー・あーサー・まタネール・ねゴトゥール・くンリンイグドラシル氏であるのか?(1巻p173) なんと出てくる長い名前の頭文字を取っていくと、「ここへくるだれでもかれでもあまねく」となるのだが、まさしくこれは「ヒア・カムズ・エヴリボディ」である。 「フィネガンズ・ウェイク」 河出文庫 ジェイムズ・ジョイス著 柳瀬尚紀訳

フィネガンズ・ウェイク 8 ささくれのささやきの

流れるような、耳に心地よい響きの文章も出てくる。心惹かれる文章である。 ささくれのささやきのささめきのさやさやとさわぐささなみの、おお、めぐるひとすじの長く耳ー出アの葦の。そして影が堤をすべりゆき、お暗い伏す歌の、ほの暗い這う歌の、ほの暗い伏す黄昏から黄昏へ、なべて和睦の世の荒地のこのうえなくも陰りに翳りて、川むこうのじきにひとつのにびいろにかわりて。こちら側に婀娜背の水の地、森繁くまばら乱れ咲きて、ごん狐ムックスは音健な目を右顧したが、すべてを聞くことはできなかった。萄獅グライブスは光猾な耳を左眄したが、ほとんど見えなかった。(1巻p298) ムックスとグライブス。 「フィネガンズ・ウェイク」 河出文庫 ジェイムズ・ジョイス著 柳瀬尚紀訳

フィネガンズ・ウェイク 7 不実の不寝番

フィネガンの通夜の不寝番達。 われらが呶物園のライオンがナイルの睡蓮たちを記憶しているように(獅リウスが子リオンを、棒霊が窓リッド出の惑マーゼルらの裸脚を、はたして忘却しようか?)おそらくは、二九まれごとの次第をじゅうぶん帯知したちびりちびらがわれらが頼信胸に封印投函したごとく、籠城の身は年のせいで落ちぶれた己を滅ぼしたあの下隠しの百合リリスたちのことをこっそりひたすら床夢に見て、彼の通夜の不実の不寝番たちに気づかずにおり、彼らはそこにいたのだった。(1巻p150) 不寝番達は、寝ながらの不寝番であったよう。その傍にいたのは誰だろう。 「フィネガンズ・ウェイク」 河出文庫 ジェイムズ・ジョイス著 柳瀬尚紀訳

フィネガンズ・ウェイク 6 歴史の書

フィネガンズウェイクは歴史で一杯である。 歴史が始まる。 かくて、なまくららの風が頁をめくり、陰ノ毛ンティ薄らが穴暮トゥスともつれぎょろ目に法けて皇けているうちに、死業の書の生者の巻の一葉一葉、彼ら自身の年代記は壮大なお国がかりの出来事の円環を時刻みつつ、華石道を通じせしめる。(1巻p37) ここから、歴史の出来事が刻まれていく。 前洪一一三二年、蟻もしくは蟻似絵滅徒に似たる男児らが、か細川に横たわるどっかい巨白鯨の上をさまよう。エブラナの鯨油なまぐさい蘭戦。(1巻p38) 歴史が始まるのだが、物語の中で、ここに至る前に書かれていることは歴史の前に起きていることになる。 前洪とは、ノアの洪水のことだろうか。それよりもずっと昔の話のよう。こうやって解読不能の歴史が繰り広げられていく。 アン歴五六六年このとき、とある鉄面髪の乙女が嘆き濡れた(波だ声悲し!)、というのも大好き人形パピットちゃんを人食い鬼の篤信シンジンブカ鬼に奪い犯されたから。バラオーハクリーの血なまぐさい合戦。(1巻p38) こんどは、アン歴が出てくる。どうもフィネガンの過去とアンの過去が刻まれているようだ。この後のアン歴によると、二人の間に二人の息子が生まれたことが書かれている。二人の歴史が交差して重なり合っていく。 「フィネガンズ・ウェイク」 河出文庫 ジェイムズ・ジョイス著 柳瀬尚紀訳