フィネガンズ・ウェイク 8 ささくれのささやきの

流れるような、耳に心地よい響きの文章も出てくる。心惹かれる文章である。

ささくれのささやきのささめきのさやさやとさわぐささなみの、おお、めぐるひとすじの長く耳ー出アの葦の。そして影が堤をすべりゆき、お暗い伏す歌の、ほの暗い這う歌の、ほの暗い伏す黄昏から黄昏へ、なべて和睦の世の荒地のこのうえなくも陰りに翳りて、川むこうのじきにひとつのにびいろにかわりて。こちら側に婀娜背の水の地、森繁くまばら乱れ咲きて、ごん狐ムックスは音健な目を右顧したが、すべてを聞くことはできなかった。萄獅グライブスは光猾な耳を左眄したが、ほとんど見えなかった。(1巻p298)
ムックスとグライブス。

「フィネガンズ・ウェイク」 河出文庫 ジェイムズ・ジョイス著 柳瀬尚紀訳





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