コンラッド 「闇の奥」 2

マーロウは、河口から200マイルも遡った奥地へと入っていった。

人影一つない空虚の国を、踏みならされた小径が網の目のようについている。草野をよぎり、焼野をすぎ、叢林を抜け、夏なお寒い警告を下るかと思えば、炎暑にぎらぎら光る石塊山を上っている。寂寥、ただ寂寥、人一人見ず、小屋一つ見ないのだ。(p38)

マーロウが雇われた会社は、象牙をアフリカの奥地から集めて売りさばいていた。マーロウが辿り着いた中央出張所では、原住民の黒人たちが会社の労働力として使われ、搾取されていた。黒人たちは周辺の村から徴集されてきて、容赦なく酷使され、体が弱るとそのまま道ばたに放っておかれた。

出張所の支配人は、クルツという男のことをしばしば口にした。中央出張所からさらに奥地へと行ったところにある出張所の責任者で、会社の上層部が一目をおく有能な人物であった。そのクルツのことを心配しているのである。

「闇の奥」 岩波書店 コンラッド著 中野好夫訳





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