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ジェイムズ・ジョイス 「フィネガンズ・ウェイク」 23 聖油そそがれた白髪まじりの

眠っていた男が起きあがり、その傍には小さい体の女が坐っている。 止まれ!動いたか?いや、じっとしとる。寝かせとけ!寝とる。(3・4巻p365) しかし、一体神体、この見捕ラえがたい男は誰あろうか、どこかのイースト菌ぐ、聖油をそそがれた白髪まじりのブロンズ色の鬘をつけ、口から泡雪、カスピれ声の喘息ぎみで、ずいぶん造りのかさばったこの男は?(3・4巻p366) ところであいつのそばにいる編み棒みたいな小っ体のは誰ですかいな?那珂なか渋い御裳濯女では?(3・4巻p366) 眠っていた男は、本当に眠っていたのか、それとも息を引き取っていたのか。不明瞭な書き方のうちに物語は進んでいく。 男は、聖油を注がれた、つまり神によって祝された者のようである。 それは、イエス・キリストの復活を示唆している。この物語は、主の復活を一人の男の通夜の場面にかけて描いているよう。 「フィネガンズ・ウェイク」 河出文庫 ジェイムズ・ジョイス著 柳瀬尚紀訳

ジェイムズ・ジョイス 「フィネガンズ・ウェイク」 22  われの闇より出で現れ

だれの声だろうか。心に響き渡る声が現れる。 わが心、わが母!わが心われの闇より出で現れ!(3・4巻p194) 「わが心われの闇より出で現れ」。心に留まって反響し続ける言葉。われの闇とは、何だろうか。自分の意識も気づかない意識下の部分、自分の中の邪悪な部分、それとも、生命の奥底に刻まれている本能の部分だろうか。いずれにしろ生命力に満ちた強い勢いを感じさせる部分だ。そんな奥底から心が現れるというのは、自分の醜い部分、本能的な部分、それともそんな部分から昇華した自分が現れるというのだろうか。 「フィネガンズ・ウェイク」 河出文庫 ジェイムズ・ジョイス著 柳瀬尚紀訳

ジェイムズ・ジョイス 「フィネガンズ・ウェイク」 21 わが終末裔らよ

物語はクライマックスに向かって進んでいく。ショーンの語りの後には、四賢人たちによる対話が続いた。四人の賢人は、聖書の福音の著者を指し、そこに復活が重ねられている。ショーンは誰を示しているのだろうか。復活する父の子だろうか。 では、終末裔とは。復活する人のこと?血筋の最後の人、もうそれ以上は血筋が下らない人。 低く、長く、嘆き声がひろがった。あくび然たるヨーンが低く横たわっていた。(略)印画にも彼の夢独白は終わったが、いん果にもその劇的多弁論過はまだ先のことだった。(3・4巻p152) くだんの四粘人はともに登り、彼に対して誓いも固き星法院式詮索を開始した。なにしろ彼がつねづね彼らのいさかいのもと、いかなる女も観念をもつのに加えていかなる虫も肉体をもつことからして、彼ら自身がどう見るか、彼らの深夜会議は彼の一席二朝に値したのだった。(3・4巻p154) いまや、この教義の到達するに、われわれは結果を誘起する誘発的原因と後他つき結果をときおり誘因的に再起させる感化とを有しておるわけだ。(3・4巻p170) わが終末裔らよ、第一動因に対照して、ぼくの始祖末なるその父は知っているのだ、ぼくの思うに、そこからぼくは起因され、自己なるしるしとしてあり、空、浜、瀬を住まいつつあるものとなったのもぼくは聖職志贋を親託されたことに関してで将来の立場を所有しながら三度時自我のほうへと落ち込みながらもなお幼皮のままでいたころに習慣がついて(3・4巻p171) そして、話さにゃなりません、日供堂に如何様しくもよみがえる!!!(3・4巻p190) 「フィネガンズ・ウェイク」 河出文庫 ジェイムズ・ジョイス著 柳瀬尚紀訳

ジェイムズ・ジョイス 「フィネガンズ・ウェイク」 20 最愛の妹よ

ジョーンからの妹への言葉。断片的なところを拾っていくと少し話の筋が見えてくるような気がする。 最愛の妹よ、とジョーンは即達する誠意をこめて郵弁に口をひらき、語法と婉曲留の不明瞭は消印し、スコラスティカな物言いとはただちにおさらばして深い愛情をもってして時をかせぎ、ぼくらが退場したとたんにおまえは痛くさびしがるだろうとぼくらは正直なところ思っているけれど、ぼくらはすべての務めの教会線を廃することに殉じるものとして感じるに、そろそろもう頃合いだから、大ハリーきりに乗って、長い最後の旅へさまよい去って、おまえのお荷物にはならないことにしよう。(3・4巻p67) われは起きるなり、おお、麗しの群がりよ!且つ始言すなり。さてはて、この序の入祭文ののち、わが銀河乙女らよ、こけけっこうな(3・4巻p67) しぐイアウ一家がわが血統だからして、われらは虻ら食むいさご虫のごとく永豪這に増足せんことを!(3・4巻p94) なあ妹よ、とジョーンはいいそえ、いくちっとばかかり陰気な雑声、それでもなお結高ふぁリューっトして、彼女に背をむけてそれの機嫌をとり、(3・4巻p100) もっと言いたいことがある。惜別の一言を述べて心の調べを静めるとしよう。契りだ。封印したっていい!それでおさらば、(3・4巻p112) さあて、おまえたちを見つめよう!(3・4巻p117) さればカモメの水平去らん、不憫だが、(3・4巻p128) 「フィネガンズ・ウェイク」 河出文庫 ジェイムズ・ジョイス著 柳瀬尚紀訳

フィネガンズ・ウェイク 19 ドンキー

なんという原初の光景! もしわしがグレゴリー氏やライオンズ氏、ならびにドクター・ターピーの、それにそうそう、ミスター・マクドガル尊師の一致せる賢頭をもっておれば、ところがわしは、お驢下者だからして、彼らの四部飄飄踉老の鈍キーにすぎん。(3・4巻p12) すると見よ(目せよ、おお黙せよ!)私見わたる私流なして、翠旒の赤冷へ青流したるごとく、吹き流され、死ん淵のあん黒を抜けて緑いんとsてい深くわしは声音を聞いた、ショーンのしょう音を愛蘭民の國音を、遠いかなたからのぎょう音を(3・4巻p16) 「フィネガンズ・ウェイク」 河出文庫 ジェイムズ・ジョイス著 柳瀬尚紀訳

フィネガンズ・ウェイク 18 創生

宜熱ス創生時の無関心時でないかもしれずあるかもしれずしかし。(2巻p216) 種族吃りにおける彼の光の恐怖は聾者の障害の宿命のうちに隠れ退くけれども彼の生の高みは花嫁の鳥瞰する茎点からすれば遠方をふさぐ山を意味する男が気ままに怠女勝ちを演ずる清水を徒渉するときであるとはいえ一行を沼沈せしめる誇りは通夜の栄光を請う一方で概要はルンバ踊りのカールする庭めぐりのごときであって、これら異神崇拝的題目は、(2巻p216) 「フィネガンズ・ウェイク」 河出文庫 ジェイムズ・ジョイス著 柳瀬尚紀訳