スタンダール 「赤と黒」 8 ヴォルテール
スタンダールは、随所にヴォルテールを引き合いに出して古いもの(伝統・慣習・宗教)を批判する代表としている。フランス革命の前夜に自由思想の下地を作ったヴォルテールの影響が、いかに大きかったのかが改めて感ぜられる。
極端に世間見ずの女に恋愛教育をうけたことは一つの幸福である。ジュリアンは現在あるがままの社会を、じかに見ることができるようになった。彼の頭は昔の、二千年前の社会のーーそれとも単に六十年前の、ヴォルテールやルイ十五世時代の社会のーー物語によってじゃまされることはなかった。(第17章)
「不信心な君なんかは、神さまが、ヴォルテールのように雷でおうちになりそうだからね。」(第27章)
その仕事をすますと、ジュリアンは思い切って、本に近よってみたが、ヴォルテールがそろっているのを見ると、うれしくて気がへんになりそうなくらいだった。(第2部 第2章)
ラ・モール嬢はいつも見つからぬように、父の図書室へそっと本を盗み出しに来るのであった。ジュリアンがいたものだから、その朝せっかく来たのが、何の役にも立たなかったし、その上とりに来たのが、ヴォルテールの『バビロンの王女』の第二巻だったからなおさら残念だった。(第2部 第3章)
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