スタンダール 「赤と黒」 6 地方都市の政治

ジュリアンが住んでいたヴェリエールの政治は、上に立つ一部の人たちによる専制政治であった。

事実、この賢明な連中がこの土地でじつにに不愉快な専制政治をしいている。パリとよばれるあの大共和国で生活したものが小都会の暮しがやりきれないのは、この不愉快な言葉のためである。世論の専横は、(しかも何という世論か!)フランスの小都会においても、アメリカ合衆国においても、同様に愚劣なことだ。(第1章)

まもなくこの博識の青年を手に入れようとする競争で、レナール氏か収容所長か、そのどちらかが勝つかということがもっぱらヴェリエール中の問題になった。この両氏は、マスロン氏を加えて三頭政治を形成して久しい年月のあいだ、この町を専制していたのである。(第22章)

フランスの小都市やニュウヨークのような選挙制の治世の不幸なことは世間にはレナール氏のような男が幾人も存在しているという事実を、われわれに思い起させるところにある。人口二万の都会では、こういう人たちが世論をつくるのであって、そしてこの世論は立憲国では恐ろしいものだ。(第23章)

貴族と自由主義者と僧侶によって支配され、三者の力関係のバランスで政治が動いていたようである。これは多分当時のフランスの縮図でもあったのだろう。








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