ジェイムズ・ジョイス 「フィネガンズ・ウェイク」 23 聖油そそがれた白髪まじりの

眠っていた男が起きあがり、その傍には小さい体の女が坐っている。
止まれ!動いたか?いや、じっとしとる。寝かせとけ!寝とる。(3・4巻p365)

しかし、一体神体、この見捕ラえがたい男は誰あろうか、どこかのイースト菌ぐ、聖油をそそがれた白髪まじりのブロンズ色の鬘をつけ、口から泡雪、カスピれ声の喘息ぎみで、ずいぶん造りのかさばったこの男は?(3・4巻p366)

ところであいつのそばにいる編み棒みたいな小っ体のは誰ですかいな?那珂なか渋い御裳濯女では?(3・4巻p366)
眠っていた男は、本当に眠っていたのか、それとも息を引き取っていたのか。不明瞭な書き方のうちに物語は進んでいく。
男は、聖油を注がれた、つまり神によって祝された者のようである。
それは、イエス・キリストの復活を示唆している。この物語は、主の復活を一人の男の通夜の場面にかけて描いているよう。

「フィネガンズ・ウェイク」 河出文庫 ジェイムズ・ジョイス著 柳瀬尚紀訳





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