フィネガンズ・ウェイク 1

「ユリシーズ」や「ダブリン市民」で知られるジェイムズ・ジョイスの作品。難解で翻訳は出来ないのではないかと言われていたものを柳瀬氏が日本語訳を実現し、世の中を驚かせた。

実際、読み始めてみるとさっぱりわからない。文章や文脈から描かれている物語の形を読みとれないのである。本当は物語はそこにあるはずである。

しかし、不思議なことに顕微鏡的に文章の中の言葉一つ一つをじっくりとながめていくと、そこには言葉遊びや歴史からの引用に満ちた小世界が現れてくる。これが読んでいて楽しい。多分全ての言葉は何らかの意味を持っていて、二重三重に重なった意味を持つものもあると思う。その意味を考えながら文章を辿っていくのである。

木を見て森を見ず。言葉が強烈な印象で目に飛び込んでくるが為に、物語を読みとれずにいる。しかし、言葉一つ一つを楽しみながら、まずは一通り読んでみようと思う。

難解で不思議な本、言葉が好きな人々を魅力的な力で惹き寄せる本。

「フィネガンズ・ウェイク」 河出文庫 ジェイムズ・ジョイス著 柳瀬尚紀訳





コメント

このブログの人気の投稿

フレイザー 「金枝篇」 ネミの祭司と神殺し

ヴォルテール 「カンディード」 自分の庭を耕すこと

安部公房 「デンドロカカリヤ」 意味の喪失