ブレヒト 「三文オペラ」 乞食のオペラ

自分の娘を取られた乞食の親分ピーチャムが、相手の盗賊の首領マクフィスを罠に落としいれる。幾度かの脱獄の後、マクフィスは死刑に処せられることになるが、間際に特赦が出て爵位と褒章までが贈られる。

盗賊も、乞食の親分も、周囲にいる者から見るとかなりに裕福な暮らしをしていることからもわかるのだが、最下層の人たちを登場させてはいても、どうもブルジョア階級を皮肉った物語のようである。盗賊たちの婚礼の宴の下品な様子などは、成り上がりの階層の教養の無さや素性の悪さを皮肉っているのだろう。

乞食たちも、フランチャイズ的な商売で乞食をやっており、上納金を支払うことを約束した親分との契約が結ばれると、組織的に商売する場所があてがわれ乞食の変装(足が悪くないのに悪いように見えるものなど)が支給される。ブルジョアたちのビジネスも全体こんな詐欺まがいのものではないかと言わんばかりである。

盗賊マクフィスは、警視総監と裏で結びついていて、法の網から逃れられるように情報をもらい、代償として稼いだものから一部を渡している。自らの婚礼にも警視総監を招待しているほどである。そんなマクフィスであったが、ピーチャム一党による乞食パレードの圧力に警視総監が屈して、絞首刑に処せられることになる。刑の執行の間際まで、マクフィスは金の力で官吏を買収して逃れようとあがくが、乞食たちの力でそれもできず、とうとう絞首台にあがることになる。しかし、刑の執行の直前に国王の特赦が出て、爵位と褒章までが約束される。この最後のどんでん返しは、唐突な感じで、筋の強引さに違和感を覚える。何故、特赦が出たのかわからないのである。しかし、逆に、そこにこの世の矛盾を表そうとしているのかとも思える。


「三文オペラ」 岩波文庫 ベルトルト・ブレヒト著 千田是也訳



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