Steinbeck, "East of Eden" (エデンの東) 3 サイラス

アダムの父サイラス・トラスクは、アダムの生まれる直前に軍隊に入ったが、入隊後すぐの戦いで片足を失い、義足の生活を余儀なくされる。除隊後故郷のコネチカットの農場に戻ったサイラスは、軍事関係の本を読みあさり、本だけの知識で軍事関係の専門家と名乗るようになった。自分の過去を知らない身内の人間に対しては、自分は軍隊時代に主要な戦に参加し、大統領や閣僚の右腕となったという作り話もした。一方で主要な論文誌に多数の寄稿をしたことから、実際にはほとんど軍事的な経験を持たないにも関わらず、軍事関係の世界では無視できない発言力を持つ専門家と見られるようになっていった。最終的にはワシントンに迎えられ、要人として生涯を閉じる。

サイラスが死んだとき、彼はたくさんの財産を息子達に残した。その財産を使ってアダムはカリフォルニアへと向かうことになる。

サイラスは非常に粗野で乱暴な人間だったのに対して、彼の妻は静かで内向的で宗教的でもあった。自分に対して厳しい性格であった。サイラスが軍隊から戻ると、彼女は自ら作りだした罪でもって自らを責め、そして乳児のアダムを残して、自殺してしまった。

サイラスは、後妻としてアリスという少女を娶った。アリスとの間に生まれたのがアダムの弟のチャールズである。穏やかな性格のアダムとは違い、チャールズは乱暴で攻撃的な性格を持っていた。二人の性格の違いに加えて、父サイラスの子供らに対する態度が、アダムとチャールズの関係に大きな影を落としていく。粗野な性格のサイラスに似ていたのはチャールズの方であったにも関わらず、サイラスの心はアダムの方を向いたが、チャールズの方には向かなかった。

サイラスと、アダムとチャールズとの関係が、第1のカインとアベルになった。

"East of Eden", Penguin Books, John Steinbeck

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