Steinbeck, "East of Eden" (エデンの東) 2 カインとアベル

この物語に大きな影を落としているのが、旧約聖書「創世記」にあるカインとアベルのテーマである。カインとアベルの話は次のようである。

アダムとイブがエデンの園を追われた後、彼らの間に二人の息子カインとアベルが生まれる。カインは土を耕す者となり、アベルは羊を飼う者となった。二人は自らの収穫を神に献げた。すなわち、カインは土からの実りを、アベルは羊の初子を神に捧げた。そのとき、神はカインの献げ物には目を向けず、アベルの献げ物だけに目を留めた。これに腹を立てたカインは、アベルを嫉妬して殺してしまった。その罪の故に神の前を去らねばならなかったカインは、エデンの東、ノド(さすらい)の地に住んだ。

つまり、エデンの東とは、神に追われたカインが住んだ場所であって、この物語は、カインのことを下敷きにして神の愛をテーマにしている。神は本当にアベルのことを好まれ、カインのことを嫌われたのであろうか。神の愛を失った者はいかに生きればいいのだろうか。

スタインベックのエデンの東には、2重の形でカインとアベルの関係が現れているように思われる。第1は、アダムとその弟チャールズの関係である。第2は、アダムの双子の息子カレブ(キャル)とアロンの関係である。

"East of Eden", Penguin Books, John Steinbeck



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