江戸文化歴史検定協会 「江戸博覧強記 上級編 (江戸文化歴史検定公式テキスト 上級編)」

江戸の生活、文化が概観できる。将軍や大名に始まり、旗本や大名の家来など武士の生活、市井に住まう町人の暮らしに至るまで実に様々な人々が説明されている。江戸文化歴史検定の教科書ではあるが、検定とは関係なく、文化歴史を知るという立場で読んでみた。

全体的に詳細に説明がされていて面白いのであるが、特に、大名や旗本・御家人、幕臣など、文学や落語などの文芸作品で名前は出てくるものの、その暮らしぶりがどうであったかをよく知らなかった階層について興味深かった。

例えば、大名の中で、老中など幕府体制の中枢を担う職へ就く者の動向がどうであったとか、大名の家格がどういうしきたりによって扱われていたかなどは、なかなか知りえない話だと思う。

旗本や御家人の家屋や家来の構成、江戸市中を往来する際のしきたりなどを読むと、落語の「かぎや」に出てくる旗本の背景がわかってきて、作品の理解に深みが出るように思った。

また、大名の参勤交代に同行して江戸詰めをしていた武士達の様子も面白い。職務の休みを利用して、歌舞伎や江戸見物を楽しみ、規則や門限を破ってまでも執拗に外出をしている武士の記録などが紹介されており、武士の中の一例であるとは思うが、当時の風潮が感じられた。


「江戸博覧強記 上級編 (江戸文化歴史検定公式テキスト 上級編)」 小学館 江戸文化歴史検定協会



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