キルケゴール 「死にいたる病」 2
人間は精神的な存在である。そうであるから、その人間が死にいたる病とは、肉体的な病にはあらず、精神的なもの、それは「絶望」であるとキルケゴールは言う。キルケゴールが言う「絶望」とは、深い意味を持つもののであり、一般的に使われている絶望とは違うということを注意する必要があると思う。
人間は本質的に「絶望」する存在である。自分が知らないうちに「絶望」している。「絶望」していないと思っているとき、あるいは「絶望」が意識にすら上らないとき、それは自分が人生の深い不安から目を逸らしているに過ぎない。真剣に人生の抱える不安に向かうとき、それは「絶望」するしかないのだとキルケゴールが言う。
この説明が難しい「絶望」の意味を探りながら読み進めていく。我々は死への恐怖を隠しつつ、日々を平穏を装って生きている。「絶望」からは、死への恐怖に近いものを感じるのだった。思弁のための思想になっていないか、絶えず気にしながら、「絶望」を探るのだが、それは素人には掴みようのないもので、するりとすり抜けてしまう。
「絶望」している状態からいかにして救われるのであろうか。それは、信仰によるしかないとキルケゴールは言う。キリスト者としてのキルケゴールが、人生の意味について出した答えである。
「死にいたる病・現代の批判」 中公クラシックス キルケゴール著 桝田啓三郎訳
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